2020年12月2日 19時00分

90代女性、パルクールでビル街を駆け回る【Uber Existence】

都内在住の遠藤ヨネさん(91)=仮名 は、存在代行サービス、Uber Existence を使って、パルクール選手としての顔ももつアクター KiEVE(キーヴ)さん(21)=仮名に乗り移り、渋谷を中心として夜のビル街でパルクールを楽しんでいるという。

遠藤ヨネさん(91)=仮名

ヨネさんは、足腰の痛みから数年前にほとんど外に出歩けなくなってしまった。そして、このコロナ禍に追い討ちをかけられるようにして、週に数度の外出さえもできなくなってしまった。しかし、3ヶ月前に、ひ孫の沙里さん(18)=仮名 の勧めで始めたUber Existenceがヨネさんの日常をガラリと変えた。最初は、慣れないパソコン操作に戸惑いがあったそうだが、沙里さんが横に着きながら練習し、やがて、一人でも扱えるようになったそうだ。
「普段自分が歩くのとは比べ物にならない、若い人の速度で風景が流れていくことがとても懐かしく感じました。自分が若かった頃の思考や感覚が思い起こされるような気がしましたね。」
とヨネさんは語る。そして、ある時偶然であったのが、パルクール選手としても活躍するKiEVE(キーヴ)さん(21)だった。その時のエピソードを語ってくれた。

KiEVEさん(21)=仮名、KiEVEさん提供

「彼の身体を初めて使った時、間違えて、行き止まりの道なのに、「止まれ」という指示をし忘れたんです。普通のアクターさんだったら、察してその場で立ち止まって指示を仰いでくれるんです。だけど、彼、そのまま塀を乗り越えて、その塀の上に立ってしまったんです。最初、何が起こったのかわからなくて、でも、そこからみえた高いところからみた景色が本当に美しくてしばらく茫然としてしまったんです。91にもなってからこんなに感動することがまだあったのか、と思いましたね。」
そこから、KiEVEさんの身体をよく使うようになったというヨネさん。今では、週に3度も夜の街に繰り出してパルクールを楽しんでいるという。
「足腰が立たなくなって、しかもコロナになったのにもかかわらず、今までで一番活発に動いている気がします。自分は動いていなくても、彼との接続が終わると本当にうっすらと汗が出ていて、疲れます。心地よい疲れです。 最近、窓の外の街並みをみると、あそこをああやって乗り越えて、あそこをくぐれば、あっちに抜けられるなあなんてルートが見えてきたり、風景が変わって見えてきてしまって、それも楽しいですね。」
今後もUber Existenceによって、コロナ禍でも安全に「外へ出る」高齢者は増加するだろう。そしてそれは、このヨネさんのように、若い身体感覚を取り戻すような体験になるのかもしれない。